今日は徳島中央市場で使われているサカナの運搬台車について
ご紹介してみましょう。
市場に入荷したサカナはセリにかけられ、仕分けされて
お客さんのところまで運ばれていくわけですが、最後は当然、
トラックに乗っていきますが、市場の中でサカナの入った箱を
移動させるときには人力で、ということになります。
そのためにサカナの入った箱を運ぶための台車があるわけですが、
この台車にも用途によっていろんな種類があり、また地方によって
いろいろな特色のある台車があったりするんです。
徳島魚類で使っている台車は大きく3種類あります。
一番メジャーで台数も多く、他の仲買さんや荷受けさんでも
よく使われているのがこのタイプ。

通称「でっち」と呼ばれている台車で、後ろのほうに2つの車輪と
荷物を支えるためのバーがつき、一番手前の部分に持ち手が
付いています。
この「でっち」にいったいどれぐらいの荷物が載るかというと・・

実はこれぐらいは余裕で乗ってしまうんですよね(爆)
これで重量にしてどれぐらいあるでしょうねぇ・・200キロは
おそらく超えているんではないかと(汗)
このでっち一台に載っていた荷物を軽トラックに載せると・・・

こんなふうにこれだけでいっぱいになってしまいました(笑)
こんだけの荷物を一人で運べるんですから驚異的ですよね!
これだけの荷物、当然ですけど普通なら人力では持ち運ぶことなんて
オリンピック級のボディビルダーでないと無理ですよね(苦笑)
でも、持てちゃうんですよ、市場マンは。
そのヒミツがこのでっちに隠されているわけです。
このでっち、よく見ると実に考え抜かれた設計なんですよね。
車輪の付いている位置が絶妙で、後ろのほうにやや荷物を
偏らせて(重心位置を後ろにずらせて荷物を載せるわけです)やると
持ち上げるときもテコの原理が働いて、意外と軽く持ち上げることが
できる、ってわけです。
もちろん、写真のようにたくさん載せてしまうとさすがに
持ち上げる瞬間はかなり重いですけどね(汗)
それでも持ち上がってしまうんですから、やはりテコの原理ってのは
すごいもんですね(笑)
で、いったん持ち上がってしまうと、前後のバランスさえ
注意してやれば、けっこう軽くこれだけの荷物を運べちゃいます。
車輪の位置がこれだけ後ろのほうについてて、しかも後ろの
ついたてが大きな2輪の台車っていうのは全国的にも珍しく、
徳島オリジナルといってもいいかも知れないですね。
2輪の台車でこれだけたくさんの荷物を載せることができて
一人で運ぶことができるっていうこのでっち、かなりの
優れものではないかと思います。
このでっちの素材としては、徳島魚類で使っているものは
ステンレスを使っています。ほかにも鉄製のでっちも
市場の中にはけっこうあるんですけど、鉄製のほうが
値段は安いかわりに錆びてしまうので、耐用年数が短いみたいです。
錆びてしまったでっちを使っていて、ある日突然持ち手が折れて
積んでいたサカナが散乱、なんてこともたまにありますしね(苦笑)
魚が散乱してしまうだけならまだいいですけど、持ってた人が
怪我してしまうこともあるので、かなり危険です。
なので、徳島魚類では製造コストはかかりますが、
オールステンレス製のでっちを採用しています。
それと、メンテナンスも重要になってきます。
さすがに毎日塩気の多い場所でかなりの荷重をかけて
使われますから、車輪のベアリングが痛んでしまいます。
このベアリングの痛んだでっちというのが実に重い(涙)
ゴリゴリと引きずるようになってしまったでっちというのは
カラの状態でも引っ張るのに力がいります。
なので、徳島魚類ではベアリングの痛んだでっちはすぐに
修理に出してメンテしてもらいます。
このメンテをマメにやっていると、結果的に耐用年数も伸びて
かかる費用も合計すると安上がりになるってわけですね。
さて、こちらの4輪タイプもけっこうメジャーです。

徳島魚類ではこのタイプはでっちと区別する意味で「台車」とか
「平台」と呼ばれることが多いですね。
中には2輪のでっちに対して4輪なので、「4輪駆動車」とか
「四駆マシン」とか呼んでいる人もいますが(笑)
さて平台のほうはというと、もちろんですけど荷物の
持ち運びはでっちよりもかなり楽です。
でっちと違って運ぶときと違って、荷台部分が傾かないので
海水の入った活魚の箱を運ぶときに便利なんです。
たくさんの荷物を載せるときには単純に上に高く積むんですが、
意外と限界があって、一度に運べる最大の荷物の量は
もしかすると2輪のでっちのほうが上かも知れないです。
この台車、やはり徳島魚類ではできるだけ軽く運べるようにと
メンテは欠かせません。なので、カラ荷の状態だと
ほんとにかる~く移動させることができます。
それはそれでとてもいいんですが・・・セリ場というのは実は
水が溜まらないように微妙に地面に傾斜が付いてるんです。
なので、何気なく台車をセリ場に置いておくと・・・
勝手に動き出して振り向くと停めておいた台車がない!?
というような珍事も起こったりすることも(苦笑)
これはメンテが行き届いた台車のデメリットかな?
2輪のでっちは停めておくときにはアシがありますから、
その場所から勝手に動き出すってことはないですからね。
それからもうちょっとお手軽に、
少しだけの荷物を運びたいんだけど手では無理、
ということもあるわけでして。そういうときはコイツの出番。

これは通称「こでっち」っていうタイプの台車。
まぁ見ての通りのものですね(苦笑)
このタイプの台車はプロパンガスの交換などをする業者さんが
けっこう町中でも使ってますよね。
こでっちにはそんなにたくさんの荷物は載せられないですね。
まぁもともとたくさんの荷物を運ぶためのものではなく、
少しだけの荷物なんだけど素手ではちょっと。。というときに
使うための台車ですから、これはこれで用途があるんですね。
さて、これらの台車、なかでもでっちというのは徳島独特のもので
しかもけっこう優れものだと言いましたが、ほかの市場では
どういう台車を使ってるんだろう? っていうのは
素直な疑問ですよね。
私が出張で見つけた台車をいくつかご紹介しましょうか。
こちらは築地市場で見かけた2輪の台車。

このタイプが築地市場では一番メジャーなタイプの台車みたいです。
徳島のでっちとよく似ているんですけども、どうやらその形からして
マグロみたいな大きな丸太のサカナを運ぶのが元々の用途かな?
という感じがしました。違うかな??
テコの原理で荷物を軽く運ぶ、というようなことは考えてなさそう。
後ろについたてもないですから、たくさんの荷物を一度に運ぶ、
というような用途に使うものでもなさそうですね。
まぁ築地市場の場合、市場自体が広いですから、荷物をトラックに
運ぶというような場合だと、トラックを駐車してるところが
売り場とかなり離れていることが多いですから、ニンゲンが
いちいち自分の足で運ぶことよりもターレットのような
エンジンのついた運搬車で運んでしまうことが多いでしょうから、
こういう人力の運搬車はそれほど重要ではないのかも。
それからこちらは石川県の地方市場でみかけた4輪の台車。

徳島のものよりもかなりスリムで、特徴的なのは手で引っ張るための
取っ手が付いているっていうところでしょうね。
しかも取っ手のついた車軸は操舵できるようになってるので、
狭いところで方向を変えたいときには便利そうです。
これも積載能力という点では徳島よりも少なそう。
どうも徳島の市場で使われている台車というのは他の市場のものと
比べて、たくさんの荷物を一気に運べるような工夫がされてたり、
台車自体が比較的大型だったりするみたいです。
これってなぜなんでしょうねぇ?
徳島の市場マンがものぐさでいっぺんに全部の荷物を
運んでしまいたい、ってことかな?(爆)
それとも荷物が多いからこれぐらい運べないと困る、ってこと?
そのへんは謎ですね~(笑)